高37回生  島津 秀紀

 令和5年10月26日(木)に津名高校創立103回目の記念式典に講師としてお招きいただき、「脳と心の不思議~世界の鼓動に耳を澄ませて~」と題して、在校生の皆さんにお話をさせていただきました。実に卒後37年ぶりの母校訪問でとても懐かしく、また学生さん達の若い息吹に触れて私にとっても大変嬉しい体験となりました。

 現在は武庫川女子大学・薬学部の教授(病態生理学)として教鞭をとっていますが、専門は脳神経内科の診療と大脳生理学研究です。ロンドン大学とマサチューセッツ工科大学で計14年間の海外研究生活を送った経験から、在校生の皆さんには世界の鼓動に触れ、未来に向かって臆せず羽ばたいて欲しいとの願いを込めてお話しさせていただきました。

 脳にはミラーニューロン(ものまねニューロン)と呼ばれる不思議な神経細胞があって、これが人間の持つ共感力(思いやり・恕)の源泉となっています。笑いや笑顔を伝染させ、その場に集う人々を幸福な気持ちにするのも、ミラーニューロンの働きです。
 若い頃、恩師に論語の一節を教わりました。『子貢問曰「有一言而可以終身行之者乎」子曰「其恕乎」⇒子貢がたずねた「先生、ただ一言で、一生行ってゆくに値することがありますか」と。孔子が答えて「それは恕(じょ・思いやりの心)です」』。ロンドンで脳研究のテーマとして出会ったミラーニューロンの働きが、古代中国の英知と重なり、ミラーニューロンが共感と笑顔を世界に広げて行くことを知りました。
 友だちや家族には笑顔で接してください。笑顔は伝染します。気分が落ち込んだ時は鏡の前で少し笑ってみてください。心が少しだけ軽くなります。思いやりと笑顔が持つ伝搬力は、世界共通なので、将来世界中のどこに行っても、きっとあなたの役に立ちます。在校生の皆さん、臆せず未来に、そして世界に羽ばたいてください!