高16回生 上条 光春

 春の女神佐保姫の名残を留める五月、阪神支部主催で奈良市内北部佐保山を中心に万葉の歌碑巡りが催された。当日は快晴。前日からの薄暑が続くが、「旅するは薄暑の頃をよしとする」と虚子が詠むごとく、気候に不足なく七キロ約三時間の行程をよしとする面々十六名がJR奈良駅前に集合した。

 参加者は(本人は若いと思っているが)七十歳以上の面々。ガイドの松野女史(高第十五回生 奈良観光ボランテイアガイドの会会員)からの第一声は、熱中症にならないように、交通事故にあわないようにとの注意。

 北に向かって歩むと先ず、「瓜食めば…」「銀も金も珠も…」で有名な山上憶良の歌碑に出会う。さらに北へ進み佐保川に。今は葉桜になっているが桜並木で有名なこの辺り、大伴家持、大伴坂上郎女の相聞歌が数多く、奈良時代に引き込まれていく。

 長屋王の歌碑を見て、歴史の道街道に入り西へ。途中奈良市街が見える山の道より遥か東の若草山の方を望めば東大寺大仏殿の鴟尾が金色に光る。

 さらに西へ、狭岡神社辺り。笠女朗の歌碑・家持坂上郎女の相聞歌碑にまたまた出会う。松野女史の解説も悲恋歌碑に一層熱を帯び目の前に郎女が解説しているが如くの錯覚を覚えてしまう。

 その辺りの木蔭にて現実に戻り、各自の自己紹介写真撮影を行いしばしの談笑の後西へ。不退寺を抜け、西へ西へと進むが此のころになると歩みも少しゆっくりとなってゆくが声は元気なままである。あちこちで笑い声が聞こえる。

 平城宮跡に到着し南に朱雀門を眺め大極殿の荘厳さに各自感動の声をまたあげる。途中雲雀の声を聴き杜若(カキツバタ)を眺め栴檀(白檀)の木などと言いながら平城宮跡を後にして近鉄西大寺駅に到着する。

 松野女史にお礼を言い、再会などを約して自由解散となる。やはり同窓生、何の抵抗もなくお互いを受け入れることのできた初夏の一日でした。秋にもやるという次の企画では誰と出会うのか。待ち遠しい。

   自作川柳一句

アメ玉を絶妙に出すガイドさん